低予算で美容室を開業する方法｜費用を抑える5つのポイントと準備の流れ

 

美容室を開業したいものの、「費用がどれくらい必要なのか」「本当に低予算で始められるのか」と不安を感じる方は多いでしょう。

一般的に開業費用は500万〜1,000万円とされていますが、居抜き物件の活用・必要最低限の設備導入・一人美容室でのスモールスタートなどを組み合わせれば、その半分以下に抑えられるケースも増えています。

ポイントは、「何にお金をかけ、どこを削るか」を見極めること。

物件選びや内装、設備投資、人件費などの固定費を最小限にしながらも、しっかり集客できる仕組みを整えることで、低予算でも安定した経営を実現できます。

本記事では、低予算で美容室を開業するための具体的な方法と、費用を抑える5つのポイント、そして開業までの流れを解説します。

美容室の開業にかかる平均費用と内訳を知ろう

低予算で美容室を開業するには、まず「どのくらいの費用がかかるのか」を正確に把握することが大切です。

ここでは、美容室の開業に必要な主な費用の内訳と、どの部分でコストを抑えられるのかを整理して解説します。

美容室開業の平均費用は500万〜1,000万円が目安

美容室の開業費用は、一般的に500万〜1,000万円前後が目安とされています。この金額には、物件取得費・内装工事費・設備購入費・広告宣伝費・運転資金などが含まれます。

たとえば10坪前後の小規模サロンでも、内装にこだわれば800万円を超えるケースもありますし、居抜き物件を活用すれば500万円以下に抑えることも可能です。

つまり、開業スタイルや立地、初期投資の範囲によって費用は大きく変動するという点を理解しておくことが重要です。

主な費用内訳（物件・内装・設備・仕入れ・広告）

美容室の開業費用は、主に「物件取得費」「内装工事費」「設備・機器費」「商材・備品の仕入れ」「広告宣伝費」に分けられます。どこにどれだけ費用をかけるかで総額が大きく変わるため、各項目の目安を知っておくことが大切です。

特に内装工事費と設備費が全体の半分以上を占めるケースが多く、ここをどう抑えるかが低予算開業のカギになります。

以下の表では、一般的な費用目安と節約のポイントをまとめました。

費用項目	目安金額	節約のポイント
物件取得費	50万〜200万円	居抜き物件や短期契約で初期費用を軽減
内装工事費	150万〜400万円	シンプルな内装＋DIYでコストを削減
設備・機器費	100万〜300万円	中古機器やリース契約を活用
商材・備品費	20万〜50万円	必要最低限からスタートし、後で追加購入
広告・宣伝費	10万〜50万円	SNS・Googleビジネスで無料集客を活用

なぜ高額になりやすいのか？コストが膨らむ理由

美容室の開業費が高額になりやすい主な理由は、内装と設備への初期投資が大きいことにあります。

特にシャンプー台やセット面、バックルームなどは機能性とデザイン性の両立が求められるため、1台あたり数十万円以上することも珍しくありません。

また、「おしゃれな空間にしたい」という想いから内装工事に予算をかけすぎてしまうケースも多く見られます。さらに、開業前後の広告宣伝費や運転資金を十分に見積もっていないと、結果的に予算が膨らむ原因となります。

低予算で開業するには、こうした“見えにくいコスト”を事前に把握しておくことが重要です。

低予算で美容室を開業するための5つのポイント

美容室の開業費用は工夫次第で抑えることも可能です。

必要なものとそうでないものをしっかり見極め、無理のない範囲でスタートすれば、自己資金が少なくても安定した経営は十分に実現可能です。

ここでは、低予算で美容室を開業したい方に向けて、無理なく費用を抑えるための5つの具体的なポイントを紹介します。

「初期費用をできるだけ減らしたい」「自己資金だけで開業したい」という方は、ぜひ参考にしてください。

スモールスタートで始める（面積10坪以下・一人美容室）

低予算で美容室を開業するなら、スモールスタートが最も現実的な方法です。

たとえば、面積10坪以下・セット面2〜3席程度の一人美容室であれば、家賃や内装費を大幅に抑えられ、初期費用を300万〜500万円ほどに抑えることも可能です。

最初から大規模な店舗や複数スタッフを抱える形にすると、家賃・人件費・光熱費などの固定費が増え、資金繰りが苦しくなりやすくなります。

まずは自分一人で始め、売上が安定してから拡張やスタッフ採用を検討するのが堅実な進め方です。小規模でも、サービスの質や接客を磨くことでリピート顧客を増やし、安定した経営を目指せます。

スモールスタートのモデル別目安（10坪以下・一人美容室）

モデル	席数 / 設備	家賃目安※都市部	初期費用目安	向いている人	ポイント
6〜8坪の最小構成	セット面2 / シャンプー1	8万〜15万円/月	250万〜400万円	完全予約・一人経営で始めたい	固定費を最小化。内装はシンプル＋DIYでOK
8〜10坪の標準一人店	セット面2〜3 / シャンプー1	10万〜20万円/月	300万〜500万円	客単価重視・落ち着いた運営がしたい	居抜き活用で工期短縮＆内装コスト削減
10〜12坪（将来拡張想定）	セット面3 / シャンプー1〜2	15万〜25万円/月	400万〜700万円	将来スタッフ採用も見据えたい	初期は一人運営、売上安定後に段階拡張

※金額は一般的な目安です。立地・相場・内装仕様・設備状態により変動します。

居抜き物件を活用して内装費を大幅削減

美容室の開業費で最も大きな割合を占めるのが内装工事費ですが、これを大幅に抑える方法の一つが「居抜き物件」の活用です。

居抜き物件とは、前テナントの内装や設備が残った状態で借りられる物件のことで、シャンプー台や配管、電気工事などを再利用できるため、内装費を100万〜300万円ほど節約できるケースもあります。

新築やスケルトン物件では一から施工が必要になりますが、居抜き物件なら短期間・低コストでオープンが可能です。ただし、設備の老朽化やレイアウトの制限があるため、契約前に専門業者と一緒に現地確認することが重要です。

必要最低限の設備・機器から導入する

美容室の開業時は、必要最低限の設備から導入することが低予算経営の鉄則です。

シャンプー台やセット椅子、ミラーなどは必須ですが、スチーマーやスパ設備などの高額機器は、集客が軌道に乗ってから段階的に導入すれば十分です。中古機器やリース契約を活用すれば、初期費用を半分以下に抑えられることもあります。

最初から完璧を目指すより、「お客様を迎えられる最低限の環境」を整えることが大切です。固定費を軽くしてスタートすることで、運転資金に余裕が生まれ、経営を安定させやすくなります。

設備・機器	目安価格	節約のポイント
シャンプー台	15万〜40万円	中古・リースを検討。1台で十分な場合も多い
セット椅子・ミラー	10万〜30万円	中古市場が豊富。デザインより機能性重視で
ワゴン・ドライヤー類	3万〜10万円	ネット通販で安価にそろえる
レジ・POSシステム	無料〜月額制（1万〜）	スマホアプリ型POSで初期費用ゼロに
タオル・備品・収納	3万〜5万円	必要分だけ購入し、段階的に追加

自分でできることはDIY・ネット集客でカバー

低予算で美容室を開業する場合は、自分でできることをできる限り自分で行うことが重要です。

内装の一部をDIYしたり、什器を組み立てたりするだけでも、数十万円単位でコストを削減できます。また、広告費をかけずに集客するなら、SNSやGoogleビジネスプロフィールの活用が効果的です。

開業前からInstagramで施術例や内装づくりの様子を発信すれば、オープン時にフォロワーがそのまま初期顧客になることもあります。「お金をかけるより、手間とアイデアをかける」ことで、低予算でも十分に成功できる土台を築くことが可能です。

従業員を雇わず、固定費を最小限に抑える

美容室経営で大きな負担となるのが人件費です。

従業員を雇えば、給与だけでなく社会保険料や労務管理の手間も発生し、月々の固定費が一気に増加します。低予算で開業するなら、まずは一人美容室としてスタートし、自分で施術・予約管理・会計まで行うのが理想的です。

人件費がかからない分、売上の多くを手元に残すことができ、黒字化もしやすくなります。もちろん、将来的に売上が安定してきた段階でスタッフを雇用し、少しずつ規模を拡大していくことも可能です。

まずは無理のない運営体制でリスクを最小限に抑えることが、長く続く美容室経営の第一歩です。

低予算で美容室を開業する準備の流れ

美容室を開業するとき、まず悩むのが「何から準備すればいいのか」という点です。

特に資金に余裕がない場合は、順序を誤ると想定外の出費が重なり、開業費が膨らんでしまうこともあります。

そこで重要なのが、低予算でも無理なく進められる準備の流れを知っておくことです。

資金計画の立て方から物件選び、集客準備までのステップを正しく踏むことで、限られた予算でも安心して美容室をオープンできます。

ここでは、費用を抑えながらスムーズに開業するための流れをわかりやすく紹介します。

ムリのない資金計画を立てる

低予算で美容室を開業するには、ムリのない資金計画を立てることが何より重要です。

まずは、開業に必要な初期費用（物件・内装・設備など）と、オープン後3〜6か月分の運転資金を分けて考えましょう。

開業直後は売上が安定しない時期もあるため、最低限の運転資金を確保しておくことで資金ショートを防げます。自己資金だけで足りない場合は、日本政策金融公庫の創業融資や自治体の補助金制度を活用するのも一つの方法です。

「どこにお金をかけ、どこを抑えるか」を明確にすることで、無理のない範囲で夢を現実に近づけることができます。

美容室開業で使える主な資金調達方法

資金調達方法	特徴	メリット	注意点
自己資金	貯金など自分で用意した資金で開業	返済不要でリスクが低い	資金が限られると設備・広告に制約が出る
日本政策金融公庫の創業融資	新規開業者向けの公的融資制度	無担保・低金利で借入可能	審査に時間がかかるため早めの準備が必要
自治体の補助金・助成金	地域の創業支援や雇用促進を目的とした制度	返済不要。低予算開業に最適	申請期間や条件が限定的
親族・知人からの借入	親族・友人から資金を借り入れる方法	柔軟な返済条件を設定できる	トラブル防止のため契約書を交わすこと
リース・分割払い	設備や機器を月額制で導入	初期費用を抑えつつ最新機器を使える	長期的には購入より高くつく場合がある

初期費用を抑えられる物件を選ぶ（居抜き・テナントシェアなど）

美容室の開業費を抑えるうえで、物件選びは最も重要なポイントです。

スケルトン（内装なし）の物件を一から作ると、内装工事や設備配管などで高額な費用が発生します。

そのため、前テナントの内装や設備を活かせる「居抜き物件」や、複数の事業者でスペースを共有する「テナントシェア」を活用するのがおすすめです。

設備がそろっていれば、初期費用を100万〜300万円ほど削減できるケースもあります。また、最近では美容室専用のレンタルスペースや間借りサロンも増えており、初期リスクを抑えて独立を試す選択肢として注目されています。

初期費用を抑えられる美容室物件タイプの比較

物件タイプ	特徴	初期費用の目安	メリット	注意点
居抜き物件	前テナントの内装・設備をそのまま引き継ぐ	200万〜400万円	工事費・設備費を大幅に節約できる	設備の状態確認と造作譲渡契約に注意
テナントシェア	他業種や美容師仲間と店舗を共同利用	100万〜300万円	家賃・光熱費などを分担できる	利用ルール・営業時間の調整が必要
レンタルスペース・間借りサロン	既存サロンの一角を借りて営業	50万〜150万円	開業リスクが最小限。試験的開業に最適	内装変更やブランド作りが制限される
スケルトン物件	内装なしの状態から自由に設計	600万〜1,000万円以上	自由度が高く理想の空間を実現できる	初期費用が最も高く、回収期間も長い

内装・設備は必要最低限＋DIYで整える

低予算で美容室を開業するなら、内装や設備は必要最低限＋DIYで整えるのがおすすめです。

壁紙の貼り替えや棚の設置、照明の取り付けなど、プロに頼むと高額になる作業も、DIYを活用すれば数万円〜数十万円のコスト削減が可能です。

また、設備も最初からすべて新品をそろえる必要はなく、中古機器やリース契約を活用することで初期投資を大きく抑えられます。重要なのは「清潔感」と「居心地の良さ」。

高級な内装よりも、自分らしい空間づくりとコストバランスを意識することで、低予算でも十分魅力的なサロンをつくることができます。

内装費を抑える具体的な方法（DIY・中古・リース活用）

方法	具体的な内容	費用削減の目安	ポイント
DIY（自分で施工）	壁紙の張り替え、棚・照明・鏡の取り付けなど	約10万〜50万円削減	YouTubeやSNSの施工例を参考に、簡単な範囲から挑戦
中古設備の活用	中古のシャンプー台・セット椅子・ミラーを購入	約30万〜100万円削減	状態・保証の有無を確認。専門業者サイトを活用
リース・レンタル契約	高額設備（シャンプー台・POS）を月額で導入	初期費用0円〜	最新機器を低コストで使えるが、長期契約に注意
シンプル設計の内装	木目×白基調など、デザインを最小限にする	約50万〜150万円削減	高級感よりも清潔感重視で十分な印象を与えられる

必要書類・手続きを自分で行い、開業代行費をカット

美容室を開業する際には、保健所への申請や税務署への開業届など、さまざまな手続きが必要です。

開業代行業者に依頼する方が多いですが、これらの手続きは自分でも十分に行うことが可能です。

多くの申請書類は自治体や税務署のホームページから取得でき、必要事項を記入して提出すれば手続きは完了します。ただし、美容所開設の際は「施設基準の確認」が必要になるため、事前に保健所へ相談しておくとスムーズに進みます。

特に低予算で開業する場合は、時間をかけてでも自分で進めることで、資金を運転費や設備費に回す余裕を確保できます。ただし、書類の不備や手続きの遅れが開業スケジュールに影響する場合もあるため、不安がある場合は専門家に相談するのも賢明です。

ターゲットを絞り、無駄のないコンセプトをつくる

低予算で美容室を開業するには、ターゲットを明確にして無駄のないコンセプトを設計することが欠かせません。

誰に来てほしいのか、どんな悩みを解決したいのかを具体的に定めることで、内装やメニュー構成、広告費を最小限に絞り込むことができます。

たとえば「30代女性向けのヘアケア特化サロン」や「メンズカット専門」など、方向性を明確にすれば、過剰な設備投資や広すぎるターゲット広告を避けられます。

明確なコンセプトがあれば、低予算でも安定したリピーターを獲得できます。

無料〜低コストでできる集客をスタート

美容室をオープンしたら、まずは無料〜低コストでできる集客からスタートしましょう。

おすすめは、InstagramやGoogleビジネスプロフィールの活用です。Instagramでは、施術例やお客様のビフォーアフター、店内の雰囲気を定期的に投稿することで、広告費をかけずに認知を広げられます。

また、Googleビジネスプロフィールに登録しておくと、地域名＋美容室で検索した際に上位表示されやすく、近隣の新規顧客獲得に直結します。さらに、LINE公式アカウントを活用して再来店を促すなど、無料ツールを組み合わせることで継続的な集客体制を構築できます。

低予算でも、工夫次第でしっかり成果を出せる時代です。

低予算開業でも成功する美容室の共通点

実際に、低予算で開業して成果を出している美容室はいくつもあります。

共通しているのは、お金をかける場所と抑える場所のバランスが取れていることです。

ここでは、低予算で開業しても長く続く美容室に共通するポイントを紹介します。

「自分の強み×地域性」に特化している

低予算で開業した美容室が成功している理由のひとつが、「自分の強み×地域性」に特化していることです。

たとえば、カットが得意ならメンズ特化、ヘアケアに強いなら30〜40代女性向けなど、自分の技術や経験を最大限に活かせる方向に絞ることで、過度な設備投資や広いターゲット向けの広告が必要なくなります。

さらに、地域の特性を踏まえてサービスを設計することも重要です。住宅街ならファミリー層、オフィス街ならビジネスパーソン、郊外なら駐車場ニーズなど、地域の生活スタイルに合ったメニューや価格設定にすることで、自然とリピーターが増えます。

「誰のためのサロンか」を明確にすれば、低予算でもしっかり選ばれる美容室をつくることができます。

固定費（家賃・人件費）を抑えながら安定集客している

低予算で開業した美容室が安定して経営できている理由のひとつが、家賃や人件費といった固定費を抑えながら、継続的に集客できる仕組みを持っていることです。

特に一人美容室の場合、スタッフの給与や社会保険料がかからないため、売上の変動に左右されにくく、月々の資金繰りが安定します。

さらに、小規模であってもSNS・Googleビジネスプロフィール・口コミ紹介などを組み合わせることで、広告費をほとんどかけずに新規・リピートの流れをつくることが可能です。固定費が低いほど経営リスクが小さくなるため、少ない来店数でも黒字を維持しやすく、結果的に長く続く美容室になりやすいのです。

リピート率を高める工夫がある（口コミ・紹介・LINE活用）

低予算で開業した美容室が安定して売上を伸ばしている大きな理由のひとつが、リピート率を高める工夫を徹底していることです。広告費を多く使えない分、来てくれたお客様にもう一度来店してもらう仕組みがとても重要になります。

たとえば、施術後に次回予約を案内したり、LINE公式アカウントでお得な情報や予約リマインドを送ることで、自然と再来店につながります。また、施術満足度を高めることはもちろん、丁寧な接客やカウンセリングを徹底することで、口コミや紹介が増え、無理なく新規顧客も増えていきます。

リピート×口コミ×紹介の循環ができれば、広告費がほとんどなくても安定した集客が可能になり、長く続くサロンへと成長できます。

まとめ

美容室の開業には大きな費用がかかるイメージがありますが、物件選び・内装・設備・人件費・集客方法を工夫することで、低予算でも十分にスタートできます。

特に、「必要最低限の設備」「居抜き物件の活用」「一人美容室でのスモールスタート」は、初期費用・固定費を大きく抑えられる有効な方法です。

また、ターゲットを絞ったコンセプト設計や、SNS・Google ビジネスプロフィールなど無料でできる集客を組み合わせることで、安定した経営とリピート獲得につなげることができます。

低予算でも、戦略と準備次第で理想の美容室を実現することは十分に可能です。ぜひ本記事のポイントを参考に、無理のない形であなたらしいサロンづくりを進めてみてください。